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2007年4月24日 (火)

全国学力調査

 えぇ、今宵は鉄道ネタではありません。&画像もありません。

 ひたすら 毒はき です。 あまりにも腹が立ったので。超長くなりますが、学校を、子どもを、そして公教育を取り巻く陰謀だとしか思えません。

 大きく報道されたとおり今日全国の小学6年生に対して文科省が一斉に学力調査をしました。調査すること自体には別段異議はありません。結果がきちんとフィードバックされ、よりよい教育を築くきっかけとなれば…です。

 が、今日、厳封された問題を開封し、見て愕然としました。

こんなの学習指導要領の範囲外だろうって。教科書とはかけ離れた問題、日々の教科の授業、問題演習でこんなのやりません。ゆとり教育と言われる前だってこの種の問題は学校ではやっていません。試験監督の先生方共通の認識です。

 でもって、A問題とB問題とあったのですが、問題の作りというか、傾向が受験前は学校なんか行くなという指示をする進学塾のサピックスのテストと同じです。そもそもA問題B問題という言い方そのものがサピックス。A問題は記号を選ぶなどサクサクスピードと判断を問われる傾向、B問題は思考力応用力を問われるのですが、このB問題がくせ者で、どう考えたって40分じゃ終わらないだろうという問題量。また、この試験の採点を委託されたベネッセのチャレンジの発展コースの難問と問題構造が同じです。要はお受験対策塾のつくった難問を全国の6年生にやらせたと言っていいでしょう。

 国語はすべて文章を書かせる方式。B4サイズの解答用紙両面めいっぱいで。文字数にすると400字詰め原稿用紙2枚分ほど。好きに作文かけって言われて原稿用紙2枚渡されるならともかく、問題読んで答えるとなったらまず大人でも40分では不可能と思われます。
 読み取る文の量も多く、それも中身が茫洋としてつかみにくい文ばかり。これ、たかが小学校の…ではないです。
難関私立中学校の入試に出ても不思議がないレベルでしょう。
 それも、文意を読み取るのではなく、「自分の考えを書け」という内容ばかり。通常説明文では「筆者の考えを読み取り、抜き出せ」「この言葉や段落はどこにかかるか」というのが教科書の内容です。
お受験進学塾でトレーニングを受けている子ならともかく、普通に小学校に通っていてはこの問題はまず解けません。そもそも、何を聞かれてどう答えればよいのかすら理解できないでしょう。

 算数のB問題。これもひたすら文章題、それも問題文の構造を難しくして題意を読み取りにくくした上に、問題自体の構造が二重三重になっていて、とっかかりすらつかめない問題の数々。サピックスやベネッセ、四谷大塚などの進学塾の難関私立中学受験コースの演習問題をそのままもってきたとしか思えない。

 私の学校の6年生、見たところ、このB問題はほぼ壊滅状態です。他の学校の先生ともちょっと話したのですが、いずこも同じ、「なんだこりゃ」状態だったそうです。ごく一部のお受験組だけはできていたようですが。

 文科省は何を考えてこんな問題を出したんでしょう。そもそも自分たちが策定した学習指導要領に基づいて「エリート」な方々が良い問題を作れないのかと。

 某教育特区の小学校ではこの春休み新6年生にこのテスト対策で大量の宿題が出たそうです。何でも学校の序列が下がると学校選択制で選んでもらえなくなり予算が減らされる…らしいです。もっとも、昨年実施の都の学力調査をイメージして宿題を出したのなら全く意味を持たなかったでしょう。いろいろ批判はされていますが、昨年の都の学力調査は学校の教育課程や教科書の理解度を測ると言う意味ではきちんとした設問だったと思います。

 テストの結果は都道府県ごと、政令指定都市ごと等、また、国立・私立・公立別で公表されます。学校ごとの序列は公表しないといえども、問題内容を考えると平均点などで明らかに公立が落ち込むのは見え見え。お受験トレーニングしている子だけが笑うことができる、そんな全国学力調査で点数が悪いのは一体誰のせいなのでしょう。そして、この調査結果を受けて笑うことができるのは一体だれでしょう。

「公立学校の学力は私立学校に比べて大幅に落ちる。」

→「公立学校の学力低下は深刻である。」

→「教員の指導力が不足している」(マスゴミ・文科省・塾)

→「公立学校はクソ、学力低下を防ぐのは塾」(塾宣伝)

 の世論誘導の流れが結果が出る前から見えています。

 …どうせ「すべての原因は公立学校の教員の質が悪いため」→「締め付けろ」という結論がでるでしょうね。というか、世論をあおってそういう結論に持って行きたいためにこのテストをやったんじゃないかとすら思えます。

 ここまで書いたら教育委員会から呼び出されてなんか言われるかもしれないけど、あまりに腹が立ったので…

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コメント

貴職のお気持ち察するあまりであります。
(多分、今日の日記はコレを書かざるを得ないのではなかったのかと…)

現場のことをな~んも知らん政治屋、官僚、利潤追及のみしか考えん経済界連中が好き放題やらかして、結果は現場押し付け、つー図式が見え見えでんがな。

折りしも(日付が変わり)2年前のきょう、大事故を起こしたJ○酉○本なんぞも、福知山線の件以前に、信楽高原の件もあるのに、現場の意見を取り入れずに効率と利益のみを追求し、ひたすら人員削減、安全性は2の次、といった、全く反省なき企業体質…

現場をおろそかにすると、世の中がおかしくなるのは、どの産業でも同じ。

当職が8年前に関わっていた某保険システムの設計なんぞ無茶苦茶で、当職にて抜本的に見直しを要求したにも上層部は耳を貸さず…結果、先日に各マスゴミが発表したやうに「不払い件数ナンバーワン」企業となりました。
(「お金は大事だよ~」とは「会社にとって大事」であって「契約者・被保険者」にとって大事、ではなかったのです)
当然でんがな…不払いになるような設計を(以下自粛)

東○電力、松○電気、パ○マガス、雪○、ニッ○ンハム、不○家…などなど、書ききれないほどの不祥事の連発・マスゴミに対してのお詫び記事。
(あの記事は「マスゴミに対して」書かれており、消費者に対して書かれているとは、とても読めません)

平成になってからの、異常事態の連発。
これも、一連の教育改悪、雇用改悪の産物。

現場で教えてないことをテストに出すなんぞ、「鉄」的にくだいて言えば「ピンクのページのない時刻表を使って、東京から中央線経由で名古屋へ出て関西線経由で大阪に行き、福知山・山陰線経由で下関までの普通片道運賃を計算しろ」と言っているやうなものです。

教育改悪、雇用改悪のツケは、すぐそこにやってきそうでんがな。

投稿: くりはし | 2007年4月25日 (水) 00時36分

昨日のテストは、文章の読解力と記述力が試された内容だったようですが、今朝の某国営放送のニュースを見ていたら、

 >出題の意図を読み取って論理的に表現する力や、 身につけた知識を実際の生活の場で活用する力などを問う内容が多
  く、学校現場はこれに合わせた指導方法の見直しを迫られることになります。

なに言ってんの? カミサンと二人で顔を見合わせてしまいました。

そもそもテストというのは、今までの学習の習熟度をはかるものじゃないですか。
それが今回のテストは、今までの学習指導要領に沿った内容ではなく、今の指導方法をわざわざ批判するために実施したように思われます。
それにテスト結果の内容が、どんなものかまだはっきりしていない翌日の朝のニュースで、いきなりこんな事を言うなんて、
何か初めから仕組まれていて、非常に意図的なものを感じます。
それにこんな事言われたんじゃ、学習指導要領をまじめに実施してきた現場の先生方は、怒り心頭ですよね。

この結果を受けて批判されるのは、現場の学校や先生ではなく、現在の学習指導要領の
内容を考え、それを実施させてきた人達に向けられるべきではないでしょうか。

投稿: ててした@昼休み中 | 2007年4月25日 (水) 13時21分

おばんです

さらに言えば・・・・
このような学力低下の問題が明白になった以上、教員や教育委員会だけに学校教育を任せておくわけにはいかん。
対象は全国で3万2千校以上、毎年実施するとなるとそれなりの人材も必要だし予算もとらなければならない。

という訳で・・・・
教育再生の一環として学力の実態調査や学力向上を目的とした「独立行政法人 学力向上センター」を設立する。
尚、同法人は教育に関し豊富な知識を持つ怪しげな有識者、及び文科省を退職した無能な役人OBにより構成される、メデタシメデタシ。
なんて構図も見えそうで・・・

しかし、毎年週刊誌で有名大学高校別合格者ランキングなるものを「売り」にしている新聞が「競争をあおることにならないか」と書いているのには笑えますね。

投稿: 身不知柿 | 2007年4月25日 (水) 22時01分

 毒吐きにおつきあいくださってありがとうございます。

 ホントは趣味のblogで書くのははばかられると思ったんですけど、さすがに怒りが納まりませんです。今日のマスゴミ、このような問題を解けることこそ「身につけるべき学力」という論調がほとんどです。文科省のアホタレ役人は「全問解けて欲しい」って何を考えているんだと私の怒りに火に油状態です。

>くりはしさん
 いつからこの国はこんなに情けなくなってしまったのか…資源がない我が国は人材こそが命のはずなのに、現場を支える最前線の人間をないがしろにして使い捨てにしてどうする。遠くない将来、かつて極東に繁栄した日本という国が…となってしまうでしょうね…

>ててしたさん
 テスト実施の意味はまさにおっしゃるとおりです。今回のは意図的に公立学校をおとしめるための陰謀だとしか思えないです。例によってマスゴミは大本営発表の垂れ流しですから結果公表や「識者」のコメントを見るまでもないと思います。

>身不知柿さん
 何でも予算70億円ちかくかけたとか。まさに利権そのものになってます。これから毎年やるんだそうな。新聞やテレビの二枚舌三枚舌はいつものことですから…

投稿: 西乃湯 | 2007年4月26日 (木) 00時00分

おばんです。
そもそもゆとり教育うんぬんを言い出したのは文科省だったはず。
世論もそうだそうだと盛り上がった記憶が。

今になって失敗しました、でも責任は文科省じゃなくて学校のせいだよ、と責任転嫁しているようにしか思えません。
自分たちの決めた指導要領をやれ、と言ったのは当の文科省。
学習指導要領から外れた問題を出して「出来ないのは能力の無い公立学校の教員のせい」はなんぼなんでもあんまりだろう、と。

知人に中学校の教員やってる人がおりますが、給料の話しやらなんやらを聞かされますです。
「給料を下げておいて、優秀なやつは昇給早くさせるだと。 んでも個人で顧客集めてる商売じゃないんだし、そもそもチームでなんぼの商売なのになぁ」

給料の国庫補助削減で浮いた費用で利権獲得、といったところですかね。

やれやれ。

投稿: 水無月 | 2007年4月26日 (木) 00時28分

 おばんです。

 まぁ、どうせ我々教員の資質が低いせいだ、締め付けろという大合唱になるでしょう。あの問題を見た瞬間にそう思いました。
 学習指導要領は法的拘束力を持つという判例が出ています。ですから学習指導要領以外のことをやると事と次第によっては処分対象です。それだけ縛りを厳しくしながらこのテストで普通に授業をやっているだけでは解けない問題ばかりを出すか…と。

 上の役所があれこれ目新しいことをやって「改革ごっこ」して自己満足するおかげでこちらはいい迷惑です。
 学校の学習は「偉大なるマンネリ」でいいんです。水戸黄門の8時43分の印籠や大岡越前のこの桜吹雪が…と同じで、展開に奇をてらっても、時代の変化を取り入れようとも、根幹の部分はどんなに時代が変わろうが変わってはいけないモノだと思うんです。
 私は学校は、人類が長い歴史の中で築き上げた偉大な知の遺産を後生に受け継ぐための学びの場だと思っています。その知を受け継いで初めて自己の考える力となる土壌ができるんだと。
 人類の知とはむろん教科教育の学問だけではないことは当然で、我々教師は発達段階に応じて知をかみ砕いて伝達し、知と知を結びつけ、実体験、または疑似体験させながら人としての経験値を年齢相応に高める手助けをするのが仕事だと思っています。「人格の完成を目指して」なんてお題目がありますが、たかが10年程度で完成された人格だの世の中を自己の判断で泳いで生きる力なんぞつくとは思っていません。
 「教育」の範疇に入りそうなことや、目先の都合の良い人材を欲しがる連中の要求をすべてハイハイと言って受け入れてきた、結果、あれもこれも学校でってことで本来最も力を入れなくてはならないであろう「知の伝達」がおろそかになるのは当たり前のことです。
 そう言って政財界や利権団体、マスゴミの思いつきの「改革案」なんぞはねつければよいだけのことです。現場を知らない役所が仕事をした気になるためによけいなことしてくれるなと。

 今回は「子ども」に焦点をあてて書きましたが、一般の教員が目にできないところで校長宛の「学校調査」も来ています。曰く、「読書の時間を設けているか」「学力向上のためにやっていることは」あげく「校長交際費は…」当然学校名記載です。学力調査の結果によって管理職の給与処遇が変わるところもあるでしょう。実際、管理職の査定精度始まりましたし。

 さらに子どもには「学習環境等の調査」と称して「塾に行っているか」「塾は週何回か」「習い事は…」「家には本が何冊あるか」等々プライバシー設問全開です。さすがに氏名記載はナシになりましたが、学校名、番号で各種相関関係が丸裸にされてしまいます。日本中の小学6年生のこのデータを受験産業のベネッセと文科省が一手に握る…これが意味するところはちょっと考えればわかるかと思います。

 まさに利権の巣窟、公教育バッシングの準備と世論誘導でしょう。

投稿: 西乃湯 | 2007年4月26日 (木) 22時43分

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